いのち 


昔、雨の日に車が滑って
そのまま回転していた、その瞬間のことを思い出した

絵に描いたように、スローモーションで動く世界の中
ただ、隣の命が無事でありますように
どうか、運が私にありますように、と祈った


目を開けた瞬間の
祈ることしかできない気持ち



彼も、同じ気持ちだっただろう


まだ幼いふたつの命を守りながら
手の届かなかった、最愛の、自分よりも大切なその命が
どうか無事でありますように
神様、
どうか運がありますように、と


大きな音が響いて
痛みの中
目を開けた、その瞬間に
何もかもを捧げると

お願いだから夢であってほしいと

すべてが嘘であってほしいと

そうできるのなら
もう二度と
何も願わない


たったひとつのボタンを
神様は、どうしてかけ違えてしまったのだろう



私たちが欲しがっているもの
毎日の小さなdisappointmentやdissatisfactions

そのひとつひとつが
なんて浅はかで意味のないものだということを

人生は、こんな風にして突然終わるものだということを

この世で何よりも大切なものを
もう一度手に入れられるものなら何もいらないと思うのだということを

それ以外のものなんて
人生にとって何の意味もないものだということを


大事なものを手にしているとき
これさえあれば他に何もいらないと


私たちはどれだけ気付けるだろう

どれだけありがたいと思えるだろう

どれだけ大切にできるだろう






Rest in Peace, Radhika.
My deepest condolences to my dearest friend, Jerome, and to your children.


Radhika Angara Memorial Fund
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太陽と水飛沫の中で 


「ちょっと下の方の川がどうなってるのか見てくるね」
と出かけたきり
2時間も3時間も戻ってこなかった私を探しに来て
ジャックダニエルボトルを抱えて、水に浸っている私を見つけて
「いつの間に手に入れたの?」
と笑った

川の真ん中に佇んで
いつまでも水遊びをしている私たちを眩しそうに見ながら
サンダルが流されないように、ずっと見ていてくれた


川岸には
キティちゃんのタトゥーを入れた、可愛いものが大好きな女の子と
私の水鉄砲の飛沫に笑う、キラキラとした妖精みたいなゲイの男の子たちがいて
ウイスキーを一気飲みして、「This is a good shit!」とつぶやく私を
可愛いと言って笑った


川の上では
クリスタルがタコスを作ってくれていて
「Thank you, Chrystal」と私が言うと
クリスタルのお尻を足の指先でつつきながら、シェルダンが
「Thank you for existing, Chrystal」
と言った


道端では
道に迷って、同じ場所に再び現れてしまった私たちに
花飾りをつえけた女の子と、緑のひげのメガネをつけた男の人たちが
「Try it again!」
と励ましてくれた


遠くで私たちを見つけて
「Those girls!」と叫ぶ声

みんながくれる
息が苦しいぐらいに強くて長いハグと
すれ違うたびに見せてくれる
太陽のような大きな笑顔


私たちの周りには
愛があふれていて
私たちは本当に愛されていて
どこにいっても、みんなが優しかった


この世界と
それを彩る妖精たちが
いつまでも幸せに
こうして笑っていられますように


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過去という生きもの 


私は、16歳のときに実家を出てしまって、正確には追い出されてしまったんだけど、そのときに、両親とのなにかの絆が切れたような気がずっとしていた。

今では一年に二回ぐらい一緒に旅行に行くような仲で、まわりからは「仲がよくていいね」とよく言われるけれど、私はずっと、あの時の時間を必死で埋めようとしていた。


あの頃。

ピザ屋でのバイトが終わって向かう、23時頃のそのバーへの道は、その時間からオープンする花屋さんがあったり、着飾ったママが元気に看板を道路に出していたりして、なんだか別の世界に迷いこんでしまったような気持ちになった。
その世界に深く迷いこんでしまったら、そのうち出てこられなくなるようで怖くもあった。

その世界にあった、いくつかの暗黙のルール。
お客さんを追いかけて電信柱を超えてしまったら、そっち側の縄張りの男の人たちに怒られたりしていた。
声がして上を見上げると、マコトさんというチーママがいて、ビルの3階の踊り場からカイロを投げてくれたりした。

私の縄張りは狭かったけど、花屋さんもあって賑やかで、とてもキラキラしていた。
上を見上げると、ビルの間にどこまでも続く真っ黒な空があって、ずっと見ていると、その真っ暗な空に吸い込まれていってしまいそうな気持ちになった。


あの頃。

私は自分のことを一人ぼっちだと思っていて、ごはんを食べさせてくれたり、車で送ってくれる男の人たちに、野良犬のようについて行っていた。

学校の友達は、私が夜働いている間みんな受験勉強に励んでいて、私が一人で暮らしていることなんて知らなかったし、バーの人たちは、私が高校生だなんてもちろん知らなかった。
自分でちゃんと起きないと誰も起こしてくれなくて寝坊してしまう怖さや、「ごはんを買うお金がない」という計り知れない不安な感情を、あの頃初めて知った。




今年の誕生日に、お母さんが手紙をくれた。
そこに書いてあった、浅はかな私が今まで想像さえもしなかったこと。


一人で学校に通っていたあの頃。
毎朝7時に、二人で学校の近くのロイヤルホストに来て、窓から私が通学する様子を見ていたということ。
夜の10時か11時頃、私の部屋の近くに来て、電気がつくまで心配で待っていたこと。
つかなかった夜は、心配で眠れなかったこと。

お母さんが、初めて、お父さんが声をあげて泣いたのを見た日のこと。
あの夜、お父さんがバーの道を追いかけてきて、私は走って逃げて、お父さんのことを撒いてしまった。
あの街のバーを、お父さんがひとつひとつ回って私のことを尋ねていたことを、何年か経ってから聞いて、泣いた。

その日を境に、お父さんは私に何もしようとしなくなって、その代わり、お母さんに対していつも私のことをかばうようになったこと。


私がいなくなってから、2人は私のことをなかったことのようにして、すっきりして暮らしているんだと思っていた。
そう思うことは悲しかったけど、これ以上ケンカしなくてよくて、これ以上2人を苦しめなくていいことは、よかったと思った。
手紙の中で、「あなたがいなくなってから、私たちの生活は全てあなた中心になりました」という言葉を読んだとき、お母さんが書き間違えたんだと思って、何度も読み返した。

そんな風に、ずっと私のことを見ていてくれたなんて。



手紙には、私が知らないそんなことばかりが書いてあって、私はそんな風に守られて、愛されていたのに、何にも知らないで、空を見上げて、
「私は一人ぼっちで生きている」
なんて思っていたんだなぁと思った。




今までずっと、過去というものは変えられなくて、忘れてしまうか、未来をもって償ったりするしかないものなんだと思っていた。

だけど、過去というものは全部、自分の記憶の中で塗り替えられた生きもので、「いま」がダイナミックに動くように、「過去」も本当はずっと動いていて、自分の記憶次第で変わっていくものなんだと知った。


だとしたら、目をそらさずに過去のことを話したり、その頃の思いを伝えてあげることで、誰かの過去を変えてあげることもできるのかも知れないと思った。

私が償いきれない、埋めきれないと思っていた16歳の頃の時間が、実はずっと愛に包まれていて、本当は一人ぼっちじゃなかったみたいに。
今になって、私は追い出されてしまったんじゃなくて、ちゃんと愛されていたんだと分かったみたいに。

ジンとコーラと何気ない週末 

次の日に彼から「他人の誕生日パーティでなんでそんなに酔っぱらえるんだ?」と言われるほど私たちは酔っていて
覚えているのは、シャンパンをコーラのように一気飲みしていたことと、巨大なジンをボトルからそのまま飲んでいたこと

ステージから見えるフロアはキラキラしていて、カメラのフラッシュがまるで音楽に合わせるように光っていた



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ルワンダの病院 

ルワンダの病院は、いつも病院とは思えないほど可愛いく装飾がされている。

たくさんの黄色と赤い花で彩られた中、色とりどりの服を着た患者さんの家族たちが集う。

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今回訪ねた病院は、Ruhengeriの小児科・産婦人科と、KinigiのEarly Child Development Center

小児科には未熟児を育てる酸素呼吸器なんかもあって、結構驚かされた。
小さな小さな真っ黒な手が、なにかを掴もうとするように空を描いていた。






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