ランダムな神様 


まだ、人の少ない木曜日夜11時のHarlotで、
いかつい顔をしてIDを見ていた怖そうなおじさんが、
扉を指差して、突然日本語で、
「どうぞお入りください」
と言った。

そんな
とんでもない確率で
私たちの前に現れてくれる神様。


ぶつかって、通り過ぎて行く人たちの
Sorry about that
という優しい低い声までもが
幸せに響いた。



私は財布を忘れてしまっていて、友達にお金を借りてお酒を頼んだあと、
聞き違いかと思ったけど、その声はたしかに
Taken care by a bartender
と言った。

テキーラショットを頼むと、無表情のまま静かに、
Two tequila shots
と繰り返したバーテンダーのおじさんが、
私たちに顔も見せずに、こっそり払ってくれていた。

こんな風に、魔法のように
また神様が、魔法をかける。


あの時、ナンパしてきた男の子たちにお酒を買ってもらわなかったのも
きっと、このためにあったんだと思った。



もう一杯飲もうと思ったら、突然ヨガでときどき見かける人が現れて、
私たちは友達になった。

こんなにくしゃくしゃの顔で笑う人だなんて思わなかった。
普段の、スタジオではあり得ない近距離で、笑い転げる私たち。

彼の友達に
彼、ヨガ上手だよ、と言ってあげた私たちに、
笑いながら、Thank you for lying 、と言った。

帰る前に、もう一杯だけ飲んで帰るよ、と言ってお酒をおごってくれた。
まるで、財布を忘れてしまった私の神様のように。



その夜は
私たちのいう「神様」が、ランダムにいろんな形で現れてきて、
私たちはもう最高に幸せだった。


手をつないだ、彼女の小指の指輪を触りながら、
この子に、たくさんのたくさんの幸せが訪れますように、
と何度も思った。