画面の、その向こうの 


「誰とメールしてるの?」と言われただけで
彼女に全て話してしまうような
そんなところが好きだった


二者択一を迫られて
嘘をつかずに、ちゃんと私と終わらせようとする
そういう、馬鹿みたいに誠実なところが好きだった



電話の画面の向こうで
きっと今頃泣いているんだろうなぁと思った


彼女の元へと帰る車の中で
あのサングラスの下で

もう二度と触れることのできない私のことを思って
泣いているんだろうなぁと
切なく思った


スーツを着て会議を進める
悩みなんてまるでなさそうな、飄々とした彼が

子供みたいに泣くところを
涙をこらえて深呼吸をしながらオフィスをに入って行くところを
小さな目が、私を見つめながら真っ赤になるところを
何度も見た


手放さないとと思う、その思いだけで
胸が苦しくて、行き場がなくて
ただ泣くことしかできない
そんな思いを
私も知っている



ごめんね

こんな世界を見せてしまって

知らないでいるよりも
一度手にしたあとに、手放す方が
何倍も何倍も辛い



それでも、彼のことだから
そうやって許してくれた彼女のことを
これから何倍も愛するんだろう


私のことを思い出しながら
それでも愚直に誠実に

まるで
私と出会う前のように




電話の画面の最後の言葉を閉じて
部屋のドアを開けたら

2人で創り上げた
誰も知らない幻の世界の面影が残っていて


あぁ、
好きだったなぁ、
と思った



電話の画面越しに
何度もごめんねを繰り返した彼に
いつかまた、出会うことがあったら

I forgive you、と
言おうと思った