3月9日 


残ると決めることは簡単で、
去ると決めることは、本当に、
自分を見失いそうなぐらいに苦しかった。


初めてオフィスに行った日。
睡眠不足のまま、インタビューの一貫で、プレゼンをしにMadeleineを訪ねた。

プレゼンは驚くほどにうまくいって、
それなのに帰り道、どうしても苦しくて、
無駄にコートや靴を買ったことを覚えている。
大切なものを手放して、パリに住むということの重さを、本当はきっとあの時にもう分かっていた。


美しくて愛おしい街、パリ。
全ての人が快楽に従順に、与えられたものを受け入れて生きる国。

日曜日にスーパーが開いていないことも、
理不尽なサービスも、5時と書いていながら5時前に閉まるところも、
全部、飲み込んで、ひとつひとつ消化して、
受け入れてきた3ヶ月だったと思う。

環境に適応しやすい私にとって、この街に溶け込むことは本当に簡単で、
いつからか当たり前のように、カフェで本を読んだり、ギャラリーを訪ねたりして週末を過ごしていた。

今までの人生で、過ごしたことのない時間。
幸せな時間。


ただ、カオスのような人生を送ってきた私にとって、ここに5年10年と住む自分が、
どうしても、想像できなかった。

思えば思うほど、怖く、しんとした静かな気持ちになった。




それなのに

ここを去ると決めて、口にして、もう戻れなくなった瞬間

初めて、
この街をを去ることを寂しいと思った。
久しぶりに、寂しくて泣きそうになった。

この街ではなく、このC'est la vieな生活でもなく
洋服でも、ギャラリーでも、カフェでもなく、

ここにいた、私を笑わせてくれた人。
私の静かなパリでの時間に鮮やかな色をくれた人たち。

それはとても鮮やかで、
時にはINSEADのときのようなcrazinessさえ伴い、
でも、一度去ってしまえば、
もう、二度とここには戻れないことを知っている。




もう、パリには戻ってこないような気がする。

サンフランを出たときとも、東京を出たときとも違う、
あれから時が経って、自分の限界と、自分の可能性をよりよく分かっているからこそ思う。

ただ、いつまでもいつまでも私は
彼らの笑顔と、彼らのここでのゆっくりとした生活と、どうしようもない妥協と、そこにあるどうしようもない愛着を、恋しく、愛おしく思うんだろう。



全ての点と点が、線でつながっていてほしいと思う。

ここで出会った人たちも、ここで関係を育んだ人たちも、
この3ヶ月があってよかったと、いつか思えたら幸せだと思う。

いまできることは、残された時間を精一杯与えることに使うこと。

最後まで、自分らしく笑って、精一杯の時間を過ごすこと。




Comments

Comment Post















管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

Trackbacks URL
http://yumemora.blog54.fc2.com/tb.php/390-f364019b