最後の夜 


そして、あれから二年が経った。

シリコンバレーの、この青い空の下に立って、あの一年間が私に与えたものはなんだったんだろうと思う。

それは、まるで夢うつつの中見た幻のようで、
なんだか、まるで膜がかかったかのように見える。


あのとき、あの瞬間に行かなければ出会えなかった出会い、起こらなかった出来事たち。



最後の夜。

シャワーを浴びるかちょっと眠るか迷って、結局20分だけ眠って、羽衣だらけの着物から、体が三分の一ぐらいしか隠れないようなドレスに着替えて最後のバブルの中へと向かった。

酔いのせいか興奮のせいか、シャトーの中は霧のような水蒸気のようなもやがかかっていた。


数々のテーブルで惜しげなく注がれるシャンパン。あちこちで交わされるハグ、カメラのシャッターの音。

みんな、馬鹿みたいに笑っていて、まるで、笑っていないとやっていられないみたいだった。
最後の最後に「あの人が好き」と言い出す人や、「カップルらしきもの」になっていた相方の前で、別の人にキスをするめちゃくちゃな人もいた。


友達の好きな人が他の誰かとキスをしていて、彼らと彼女をつなぐ線の上に立って、彼女からそれが見えないようにした。

そういうきっと私たちの中でしか成り立たないような優しさ。
みんながバブルから出て行く傷を舐め合っているかのような狂おしさ。



私たちは、例のごとくパーティーが完全に終わって、明け方に出されたブレックファーストの跡もむなしく、朝陽がうっすらと射すまでそのシャトーにいた。
車の中でふざけて男の子と手をつないだら、その子のことを好きな友達に怒られた。


あの日のそれは、バブルから出るための一種の儀式のようなものだったんだと思う。


それはそれは痛々しく、瞬きもできないぐらいに輝いていて、
とにかく、美しかった。

ただ「美しい」の、ただその一言だった。



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